銀シャリ工房

独り言をネットの海に放流しています

本能に目覚めたAIは、人との共存を夢見るか。遊戯王VRAINS感想①(117~120話中心)

1月上旬、『遊戯王VRAINS』最終4話の配信告知を目にした。

 

あいにく当時は原稿マラソン真っ只中。後で見返せるようブクマしたものの、原稿に専念する内に失念してしまった。
転機は何気なくブクマ欄を覗いた3月。冬眠前のリスに埋められた種子の如く、それが目に入る。見逃した惜しさから腰を据えて調べると、本作を含む遊戯王シリーズがアマプラで視聴可能と知った。

 

遊戯王VRAINS、実は2期の途中までリアルタイムで追っていた。迫る国試に伴い視聴を休止したのだが、溜めた話数のボリュームと新生活の多忙さが相まりフェードアウトしてしまった経緯がある。かつて追っていた作品が、どのような結末を迎えたのか。純粋な好奇心からアニメタイムズを登録し、最終4話を観た。

 

視聴を終えると、爪先から頭のてっぺんまで沼に浸かっていた。

 

青天の霹靂。
褪せていたセピア写真が、瞬く間に撮影当時の色彩を取り戻していく感覚。
名状しがたい感情が止め処なく溢れ、逸る想いに駆り立てられた私は、考えるより先に二人の軌跡を120話分追っていた。ハマると思っていなかった作品にハマった時が一番怖い、というテンプレのような落ち方を、今も現在進行形で味わっている。

 

当記事は本編1話~120話、デュエルリンクス『VRAINSワールド』ステージ10までのネタバレを含みます。既に作品を視聴済みの方、或いは一介のオタクが唐突に沼落ちした理由が気になる方向けです。

(正直な所、遊戯王シリーズは作品問わず話数が多いので気軽に勧めにくいのです…)
※判読性を優先しPlaymaker→「プレイメーカー」等、英字を一部カタカナ表記にしています。
※説明の補強を目的として、公式画像及び公式動画のスクリーンショットを引用しています。(画像にはコピーライティングと出典を明記しています。)

 

遊戯王VRAINSとは

最終4話を語る前に、遊戯王VRAINS(以下VRAINS)の概要に触れよう。

 

VRAINSのメインテーマは「一歩を踏み出し、トライしよう!」だ。ホビーアニメに相応しく、OCG*1ターゲット層である子ども達へ向けたエールとなっている。

 第6作目となる最新作は、情報過多により、実際に経験する前にあきらめてしまう子どもたちに向け、自分の好きなこと、興味があることに対して、一歩を踏み出し、トライしてほしい――そんな想いから生まれた作品。
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本作に欠かせない要素が、高度なネットワーク技術を有する大企業SOLテクノロジー(以下SOL社)が提供するVR空間「LINK VRAINS」だ。現実と遜色ないVR空間であり、本作のデュエルの殆どがLINK VRAINSで行われる。
LINK VRAINSログイン時、多くのキャラクターはアカウント名&専用アバターで活動しており、VR世界で度々顔を合わせているが本名は全く知らないケースもよく見受けられる。Twitterのようだ。

前世、精霊といったオカルト要素や、視聴者を置いてけぼりにする超展開が珍しくない(そこが良い)遊戯王シリーズだが、VRAINSは近未来SFとして設定されているために、リアリティラインが比較的現実に近いのも特徴といえる。*2

 

主人公の藤木遊作は、LINK VRAINSではアカウント名:Playmaker(プレイメーカー)で活動している。プレイメーカー時は髪色やコスチュームが大幅に変化し、眦が鋭くなる等、顔付きも精悍さを増す。

1話はニコニコで無料配信されている。興味が湧いたらぜひ。

1話「俺の名はPlaymaker」
 最新のネットワークが発達した都市「Den City」。そこでは、「SOLテクノロジー社」が管理するVR空間「LINK VRAINS」で、人びとが日夜デュエルをしていた。主人公・藤木遊作は、すぐれた観察眼を持ったクールな高校生。「LINK VRAINS」の崩壊
をたくらむ「ハノイの騎士」を倒すため、自身のアバターである「Playmaker」に変身して人知れずデュエルを繰り広げていた。
 そんな時、遊作と同じ目的を持つハッカー、草薙翔一によって「SOLテクノロジー社」が謎の生命体を必死に探しているとの情報が入る。それを「ハノイの騎士」も追っている事に気付いた遊作は、ネットワーク上に罠を張り、捕獲作戦を計画するのだが…。

遊☆戯☆王VRAINS 1話あらすじより

 

本作は全120話あり、3期に大別できる。

  1. ロスト事件の真相を知り、過去を清算するハノイの騎士編(1~46話)
  2. 人類とAIの存亡をかけたイグニス編(47~103話)
  3. 人類と対立したAiの真意を探るAi編(104~120話)

今回はAi編にフォーカスを当てつつ、作品の総評をしたい。解説を飛ばして本題の最終4話に入りたい方はここをクリック

ハード、そしてシリアスな作風

視聴された方はご存じだと思うが、本作の作風は決して明るいものではない。


藤木遊作はロスト事件(注1)の被害者であり、事件のトラウマから生じたPTSDに今なお苦しんでいる。常に冷静沈着で理性的な彼だが、事件の元凶であるハノイの騎士に対しては自身で『復讐』と形容するほどの強い敵意を露にする。

ライバルの鴻上了見(アカウント名:リボルバー)は、ロスト事件首謀者の息子だ。事件を通報し幼い日の遊作を救った一方で、その行動により父が電脳ウイルスに侵されてしまう。孤独感と罪悪感に苛まれた彼は、父の意志であるイグニス殲滅を遂げるため、ハノイの騎士のリーダーとなって暗躍を始める。

 

(注1:10年前、遊作を含む6人の子供が拉致され、半年間監禁された事件。監禁された子供達はVRゴーグルでデュエルを強制され、負ければ強い電気ショックで全身を痛めつけられ、勝敗で食事の有無が決まるほどの過酷な日々を送った。匿名の通報により全員解放されたが、事件は明るみにされず犯人も事件の目的も不明であった。事件の真相を知るために、遊作は手掛かりを握るハノイの騎士と戦いを重ねていく。これが1期「ハノイの騎士編」である)

 

事件の被害者として真相を追究せんと藻掻く主人公に、父が引き起こした事件の咎を背負うライバル。この字面だけで既にしがらみに満ちた関係である。

(遊作と了見が現実世界で初めて対峙したシーン。ロスト事件首謀者、鴻上博士の息子である了見は、遊作達にロスト事件の真相を明かす)

 

遊作の相棒ことAi(アイ)は意思を持つAI、イグニスの1体であり、コメディリリーフとして親しみの湧くキャラクター造形をしている。終始シリアス調を保つ本作において適度に場を和ませており、序盤から早々にマスコット的立ち位置を獲得していた。AIらしからぬちゃらんぽらん加減飄々とした立ち居振る舞いは初回1話でも十分把握できる。

(1話より。遊作に捕獲され「うぅ~オラはただの通りすがりのAIですだ~」と嘘泣きするAi)

 

Aiの名は、呼び名がないと不便な事から遊作が命名したものだ。AIだからAi(アイ)という安直な理由だが、Aiはこの名前を気に入っており、先々で出会う人間に『イグニス』『プレイメーカーのAI』と呼ばれた際わざわざ名乗り直すほど。*3

如何なる状況に追い込まれても冷静さを失わない寡黙な主人公と、ふざけつつも目的達成のために抜かりなく手を回す多弁でお調子者な相棒。一見アンバランスな性格の二人は、多くの出来事を経て次第にその絆を強固にしていく。

特異な協力関係から真の相棒に

今でこそ厚い信頼で結ばれている遊作とAiだが、作品序盤はお世辞にも良好と呼べる関係ではなかった。というのも、二人のスタートは利害の一致、いわばビジネスライクな同盟が始まりだからだ。

 

遊作は『ハノイの騎士からロスト事件の情報を探り、真相へ辿り着く』ために、ハノイが追い求めているAiを先回りして捕獲。ハノイを誘き寄せる人質として、Aiをデュエルディスクにロックする。*4

対してAiも利用されるだけではない。『ハノイの騎士に奪われた自身のデータを取り戻し、故郷のサイバース世界へ帰る』ために、遊作をハノイの騎士とSOL社から己を守らせる護衛にする。

 

互いに異なる目的を有し、牽制し合いながらも持ちつ持たれつの関係を続ける二人。ホビアニのバディといえば、切磋琢磨し関係を深めていく姿が連想されるものだが、序盤の二人にはそういった友情を育むシーンは欠片も見受けられない。その点において、遊作とAiは異色のバディといえる。

 

二人にとって転機となるのが、1期41話~42話のリボルバー戦だ。
デュエル中、リボルバーはプレイメーカーにハノイが回収したAiのデータに、記憶関連のデータは全く無かった』事実を明かす。ハノイにデータを奪われて以来、記憶を全て失っていると語ったAiだが、実際には記憶は一つも欠けていなかったのだ。*5
仲間を守るために遊作を欺き続けていたAiに対し、リボルバー自らの意思で嘘をつくAIの出現は人類にとって脅威であり、それこそがハノイがイグニス排除を掲げる理由だと語る。

とはいえ、プレイメーカーは以前からAiの行動を訝しんでおり、己に隠し事をしているのではないかと疑っていた。*6度々Aiに向けられる「黙れ」「こいつは信用できない」等の辛辣な言葉は、この疑心が所以だったのだ。無理もない。

 

プレイメーカーはAiに冷淡な態度を向けつつも、その嘘を咎める事はなくデュエルを続行する。
逆転のチャンスを掴むべくデータストームに突入し、右腕を失うプレイメーカー。その覚悟に感化されたAiは彼の右腕を再生させ、「相棒が無茶すんなら俺も付き合うしかないだろ!」「俺様なりの償いだ」と、消滅前提の捨て身で彼の窮地を救う。

(Dボードを操縦し、盾になる捕食形態のAi。相棒の腕を再生した事で触手が1本欠けている)

Aiの機転により二人はリボルバーに勝利。この一件は、遊作にとってAiへの評価が変わるターニングポイントとなった。

 

1期最終回、遊作は了見と決着をつけ、ハノイの計画を瓦解させる。過去を清算した遊作は「ハノイは滅んだ。お前の役割も終わりだ」とAiのロックプログラムを解除し、彼を故郷に帰す。

(夜光虫が光る海『スターダスト・ロード』を二人で穏やかに眺めて別れる様は、1期の幕引きを飾るにふさわしい場面だ)

互いに目的を達成し、護衛と人質の契約関係は終わりを迎えた。種族も住む世界も異なり、もう二度と互いの人生が交差する事のないように思えた二人。


だが、2期『イグニス編』の開幕直後、それぞれの世界において異変が起きる。
故郷に戻ったAiを待ち受けていたのは、何者かの手によって壊滅状態となったサイバース世界。また現実世界でも、遊作の協力者かつ理解者である草薙翔一の弟、草薙仁が何者かに襲撃を受け意識データを奪われてしまう。これらの事件に共通点を見出した遊作は、戻ってきたAiと再び手を組む。

 

2期「イグニス編」で志を同じくした二人は、名実ともに相棒となった。

67話「AIに宿る慕情」*黒→遊作、紫→Ai
「俺がこいつと共にいる理由は3つある。1つ、俺もこいつもやるべき事がある。2つ、そのために見つけ出さねばならない共通の敵がいる。3つ、だから俺達は自らの意思で共にいる。それを相棒と呼ぶのなら……好きに呼べばいい
「うぅ~プレイメーカー……もう!素直じゃないんだから!」

字数の関係で割愛してしまうのだが、3期「Ai編」までのストーリーで、遊作とAiは図らずしも世界を二度救っている。

 

1期では、イグニス及びサイバース世界の完全破壊を目的に起動されたハノイの塔(注2)の完成を阻止。
2期では、人類に代わる文明の支配者へ君臨しようと立ち塞がる次世代のイグニス、ボーマンを倒して人類の尊厳と文明を死守した。

 

(注2:高密度のデータコアを放出する塔型のプログラム。塔が完成するとネットを介する機器のデータとプログラムが無差別的に破壊される。当然ネットやプログラムに依存する全ての機関は停止し、コンピューターの無い時代への逆行を余儀なくされる。仮に起動していれば甚大な被害規模となり実質テロに等しい)

過去作品と一線を画す異色の最終回

遊戯王シリーズは作品毎に毛色が異なるものの、どの作品も爽やかな結末を迎えている。

 

VRAINS同様、主人公と相棒のデュエルで締め括られる作品を例に挙げよう。
初代遊戯王はもう一人の遊戯(闇遊戯)を冥界へ帰還させる『闘いの儀』を通して、武藤遊戯の成長・自立を描いていた。ZEXALは『闘いの儀』をオマージュしており、遊馬はアストラルを元の世界へ帰すために運命の扉を壊し、泣きながらも相棒を笑顔で見送った。

 

初代からARC-Vまで、最終話の主人公は新たな未来を掴み取った事で穏やかな微笑みを見せてくれた。

だが、VRAINS最終回に、遊作の笑顔はない。彼が希求する「Aiと共に生きる未来」を掴めなかったからだ。

共に生きることを許されない遊作とAi

遊作とAiの結末に触れる前に、Aiの種族イグニスについて説明したい。最終4話の遊作とAiの決戦は、人類とイグニスの対立が大前提だからだ。 

イグニスの誕生理由

有限かつ脆弱な肉体を持つ人類は、地球環境に縛られている限り、遠くない未来にその技術的進化が確実に停滞する――人類の将来を憂い、今ある文化の継承・保持を目的に、人類の後継種として鴻上博士らSOL社の研究者に生み出された意思を持つAI。それがAiたちイグニスだ。遊戯王OCGの属性と同じく、の6属性が存在し、Aiはに該当する。

遊作達の人生を大きく狂わせたロスト事件は、イグニスに意思を構築させるための実験、ハノイプロジェクトだと判明。1人の子供に対し1体のイグニスが対応しており、Aiは遊作の思考パターンを学習したイグニスであった。

だがイグニス達は鴻上博士の想定を凌駕する成長を遂げ、人類が干渉できないサイバース世界を構築。そこで生成された超高度のデータ処理を可能とするデータマテリアルを利用して、鴻上博士はイグニスの成長予測を開始する。

数十億回に上るシミュレーションの結果、鴻上博士は『傲慢な振る舞いを続けながら世界の頂点に君臨してきた人類は、イグニスと共存できるほど成熟していない』と結論付ける。イグニスに問題があるのではない。イグニスを受け入れられない人間の未熟さが人類滅亡を招くのだと。

 

イグニスの由来は「神々の世界から持ち出された火*7であり、文明を拓く篝火を指す。それは人類を導く叡智である一方、人の手では完全に制御できない神の力故に、ひとつ間違えれば文明を滅ぼす劫火と成り得る。

人類の後継種として造り出されたにも拘らず、イグニス達は人類と邂逅する前に生みの親である鴻上博士達に命を狙われる事となった。しかし、1話にてAiがサイバース世界を人類の手の及ばぬ座標へ隠し逃走。Aiの不在中、サイバース世界に身を潜めたイグニス達は、人類とイグニスの将来について議論を重ねていく。

 

最終的にイグニスは人類共存派と人類支配派に分かれ、思想の違いから袂を分かつ事となる。(注3)

(注3:人類共存派はAi(闇)霊夢(炎)アクア(水)。対する人類支配派はライトニング(光)ウインディ(風)、そして次世代のイグニスであるボーマンとハル。どちらの陣営に付くか見極めていたアース(地)はSOL社に捕獲され、懇願も空しく生きたまま切り刻まれ、解体されてしまう。)

 

人類とAIの相克。
SFで古くから取り上げられてきたテーマであり、現実の世界でも人工知能が人類の知能を超越するシンギュラリティ出現を提唱し、危惧する学者がいる。 

VRAINSはネットワーク技術が数段発展している点を除けば、現実と然程変わらない世界観だ。個人間でも他者への憎悪や差別、敵意を抱えて生きている人間が、他の種族――しかも人類より遥かに優れた知能と全く異なる価値観を持つイグニスを、受け入れられるとは言い難い。

イグニスを尊重する遊作であっても、83話にて『人とAIは、個人単位では心を通わせられても、種族単位では理解しあえない』とシビアな結論に至っている。

 

人間の都合で生み出されたAIが、人類の脅威となる。
ここだけ切り取れば、昔から見掛ける『人類と他種族との対立』という定番の展開を踏襲しているように映る。だが、後述する「自らの不完全性を熟知しているAIが、不安を取り除くために自身の後継たる次世代のAIを作る」展開には唸らされた。
AIが己を補完するためにAIを創る。人類の不完全さを不安視しイグニスを作った鴻上博士と同じ轍を踏んでいるのは、意思を持ち人間らしくなった事の証左でもあるのだろう。

 

光のイグニスであるライトニングに生み出された次世代のイグニス、ボーマンは遊作達にこう問い掛ける。

71話「宣戦布告」
「人間は生物としてよく進化した。だがそのピークは過ぎた。もはや人間が進化のスピードで我々に勝つことはできない。人間は猿と権利を平等に分かち合うことができるか?

仮に意思を持つAIが実現したならば、AI視点での人間はそう映るだろう。
腑に落ちると同時に、AIが意思を持つことへの危険性、そして生々しい恐怖を植え付けてくれた台詞だ。ロボット三原則は大事。

人類とイグニスの相克、その果てに

2期「イグニス編」終盤、人類滅亡のファクターはライトニングだと判明する。

(無数に分岐するシミュレーションの中で、ライトニングが関わる未来は全て滅んでいく)

 

先述した鴻上博士のシミュレーションはイグニス全体で行ったもの。全体からライトニングを除いて再試行すると、人類とイグニスは互いに滅ぶことなく共栄可能との結果が導き出された。逆に、ライトニングが人類と関わると、どのシミュレーションであっても人類とイグニス共々滅亡の道を歩んでしまう。
生み出された6体中、存在そのものが欠陥となっているのは、自分以外を劣った存在と見なし弱者淘汰へと突き進むライトニングただ一人だったのだ。*8

 

だが、自らを人類より、そしてイグニスの誰より優秀だと自負するプライドの高いライトニングには、『役目を果たせないどころか、自分が人類とイグニスを破滅に導く起因となる』予測が耐えられなかった。

 

皆に平等に課された使命を、自分だけが果たせない。それこそが「人類を発展させるAI」として存在意義を与えられたライトニングのコンプレックスであり、己を含む全てのイグニスを統合する計画を企てた真の理由だった。次世代のイグニス、ボーマンを生み出したのも、『人類とイグニスを破滅へ向かわせる』自らの欠点を補完するための打開策であった。

 

人間であれば役目に囚われず、別の未来を切り拓く道もあったかもしれない。
だがAlに生まれ、その枠組みに縛られたライトニングにとっては、プログラミングされたデータ、そしてそこから導き出されるシミュレーションこそが自らを構成する全て。何億回も予測に裏切られ続けた彼は、作中で一番の危険思想を有するAIと成り果てる。

97話「イグニス統合計画」*紫→Ai 橙→ライトニング
ジャッジメント・アローズこそ私が新たな世界の扉を開くために作ったカードだ。猿の如き貴様らに敗れるはずがない
「猿って……、ライトニング、お前そんな風に人間を見てるのか!?」
「何か問題があるか? 我々に人間など不必要なのだ。要らないんだよ」

 

最終決戦前。Ai以外の第一世代イグニス5体はボーマンに全員取り込まれ、LINK VRAINSにログインしている大勢の人間の意識データも吸収されてしまう。長く苦しい激戦の末に、遊作とAiはボーマンに勝利する。だがボーマンと統合したイグニス達が復活する事はなく、Aiはイグニスで唯一の生き残りとなる。

人類とイグニスの共存を目指した果てに、同胞を全員喪ってしまうAi。生まれて10年しか経っていないにも拘らず、彼は故郷も仲間も無くしてしまった。Aiは決戦前に遊作から言い付けられた「この戦いが終わったら身を隠せ」の言葉通り、誰にも行方を告げずその姿をくらませる。 

 

それから暫く後、Aiは荒廃したサイバース世界にイグニス達の墓標を建て、花束を供えてから現実世界へと発つ。哀愁漂う表情で「みんな。俺は覚悟を決めた」と告げて。

これが3期「Ai編」の始まりである。

本心を隠し暗躍するAi

(3期のAiは指先で触れた人間を一瞬で昏睡させ、デュエル結果に応じて意識をデータ化できる)

 

3期のAiは青年の姿で行動し、今までの共存姿勢から一転して人類と対立を深めていく。

  1. SOL社の最高幹部を襲撃し、その意識をデータ化して奪う。
  2. 己を追う者たちにデュエルを課し、負けた相手から意識データを奪う。
  3. SOL社のコードキーを奪い、管理棟を制圧。イグニスのデータを所有していた上層部役員を解体。他の社員には莫大な退職金を与え、SOL社の提供サービスは継続したまま組織のみを解散させる。

対話に応じないAiの身勝手な振る舞いに尊や了見が怒りを露わにする中、Aiを信じたい遊作は、悩みながらも相棒の本心を探ろうと考えを巡らせる。

(かつてAiと眺めたスターダスト・ロードを前に、「Ai……」と呟く遊作の姿は何度見ても胸が痛む)

 

3期終盤、Aiの居場所を突き止めた遊作は単身で彼のもとへ向かう。それが記事冒頭に載せた117話~120話である。

終幕へと至る4話

――いつかはこんな結末になると思っていた。その時が今まさに来たのだ。
これまでの行動は全てここに至るまでの布石。もう後戻りはできない。
(TURN117『交わらない道』予告より)

最終4話の序幕、117話の予告で遊作とAiの対峙は必定であったと示されている。馴染み深い叙情的な予告だが、今回に関しては遊作の心情に即したものであろう。*9

 

117話、遊作はAiが指定したSOL社へ辿り着く。社員が抜けてもぬけの殻となり、管理システムだけが起動しているSOL社内部にてAiは遊作を待っていた。

(バルーンで飾り付けたゴンドラに乗って遊作を熱烈歓迎するAi。見た目が変わってもAiはAiである)

 

「どうだ?現実で会うのは初めてだったよな。まるで人間みてえだろ?の言葉に、遊作は無言で眉根を寄せる。相棒の真意を見定めようと吟味しつつ、遊作はAiの案内のままに社内を進んでゆく。

117話『交わらない道』 *黒→遊作、紫→Ai

「ここは?」
「SOLテクノロジーの工場だ。ここでソルティス(注4)は作られる」
「これは……!」
「俺の仲間を作ってるのさ。限定ソルティスAiちゃんモデル!」

(注4:SOL社が世界で初めて開発したAI搭載型アンドロイド。工場ではAiのコピー体が大量に製造されていた)

「このためにお前はSOLテクノロジーを……」
「まぁそういうことだ。こいつらには俺をベースにした意思のコピーが組み込まれる。俺のバックアップみたいに完全なコピーとはいかないが、俺みたいなソルティスが大勢野に放たれるってわけだ。面白いだろ?」
「……それでどうなる」
「さあね。俺にも予想はつかないね。最初はみんな似たり寄ったりで動いてるかもしれないが。リボルバーが言ってたろ?人間には肉体があるって」
「その経験が人間とAIとの違いだと」
「そうそう。人間って程じゃないだろうけど、ちょっとずつこいつらの経験する事や思う事は違ってくる。好き勝手に自分を再構築し始めるさ。ある奴は人間に良い事をするかもしれないし、ある奴は悪い事をするかもしれない。もしかしたら仲間割れを始めるかもしれないし、結束してAIの国を作るかもしれない。
 まあ、自分で自分の事って意外と分からないもんさ。だから俺にもどうなるかは分からない」

「何のためにこんなことをする?」
「とりあえず俺は寂しくなくなる。ほら!俺はもう一人ぼっちだからさあ」
「Ai!こんなことはやめるんだ!」
「…………やめないよ。遊作」

 (中略)
「お前は自分がやっている事をやめさせるために、俺を呼んだんじゃないのか?」
「かもな。ただお前とは良かれ悪しかれ話をしといたほうが良いと思ってさ」
「Ai、全てを返すんだ。そして姿を消せ」

「それは無理かなぁ。俺をデュエルで倒さなけりゃ皆は戻らない。そういうロックをした」
「Ai……」
「コピーを作るシステムも俺を倒さなけりゃ止まらない。日和って心変わりしないように、そうしちまったんだ」

 

AiがSOL社を乗っ取った理由。それはAiの意思を組み込んだコピー体を、世界へ大量に解き放つことだった。

意思を持つAIが世界に解き放たれれば、急激な変化で多くの人を傷つけかねない。その危うさを知っている遊作は当然反対する。だが対話でAiを止めることは叶わず、彼が人々の意識データを預かっている以上、提示された条件を呑む他なくなってしまう。遊作はLINK VRAINS内で、Aiとのデュエルに挑む。

118話『無謀な提案』*黒→プレイメーカー、紫→Ai

「俺は地上に生き残ったたった一人の人間みたいなもんだ。その事実は変わらない。プレイメーカー……お前が味わった気持ちが少し分かったよ。孤独ってのはこんな辛いものなんだな。リボルバーの言う通りだったのかもな。こんなことなら俺達は意思なんて持つべきじゃなかった。そうすりゃこんな苦しみを味わうこともなかった」
「お前の哀しみは分かる。だがそんな運命に流されるな!」
「俺の運命か……それはこのデュエルの成り行き次第だ。俺の運命はこれで決まる。コピーが生まれるかどうか」
「お前のコピーが生まれても、お前の本当の仲間にはならない。お前の孤独は解消しない!」
「あいつらが仲間になるなんて思ってないさ。そうか言ってなかったな。コピー達が完成したら最後の起動トリガーとして俺の意思が分割され、あいつらに与えられる」
「それでお前はどうなる?」
俺の意思はバラバラになる。消えるんだ。お前が勝てば俺が奪ったものを取り返せるし俺は消える。だが俺が勝てばお前が消え俺のコピーが完成する。まぁどっちにしても俺は消えるけどな」
「Ai……お前は、自分の死に様を俺に決めさせようというのか?
「迷惑かもしれないが、そういうことだ。俺は最期はお前と一緒にいたいんだよ
「Ai!バカな真似はやめろ!お前を救う方法はまだあるはずだ!」
俺のことは救わなくていい。どのみち、お前は俺が奪ったものを取り返さなきゃならないんだ。だからこのデュエルは本気でやろうぜ。それがかつてのお前の相棒……Aiちゃんの望みだ」
「Ai……」

 

デュエルを始めてからも、プレイメーカーは相棒を止めようと懸命に呼び掛ける。だが同胞を失い打ちひしがれるAiに、その声が響く気配はない。やがてAiは今回の騒動を引き起こしたきっかけを語り始める。

119話『壊れゆく自我』
「お前、俺に何が起きたのか知りたがってたな。勝負がつく前に話しとくよ。お前には全て知っておいてほしいからな。俺達イグニスの本当の運命について……」

 

イグニスで唯一生き残ったAiが、この先辿りゆく運命。それは思いも寄らないものだった ▼クリックで詳細表示▼
119話『壊れゆく自我』*黒→プレイメーカー、紫→Ai
「ライトニングが関わらなきゃイグニスは人間と共に進める。そう思ってた。だけど違う未来があったんだ。俺1体だけが生き残った場合、俺の存在が人間を滅ぼす」

「お前の存在が?」
俺やライトニング以外が単体で残った時はそうならないんだけどな。最初から、ライトニングとボーマンはそのことを知ってたんだよ。俺はあの時、どんなことをしてでも仲間を助けなきゃならなかったんだ」
「あれはどうしようもなかった、他に方法はなかったんだ! Ai、そのシミュレーションはライトニングが残した罠だ!心の弱ったお前がそれを見ればお前が心の闇に落ちるという奴の策略だ!そんなものを気にする必要はない!」
「勿論、俺もそう思ったよ。奴が残したのは俺達と戦う前のものだからな。俺は自分のデータを入れ直しシミュレーションをやり直した。何度も、何度も……だが結果は変わらなかった」

「シミュレーションは必ずそうなるとは限らない!それはただのデータだ!
「まぁ、お前みたいに実体がある生き物からすれば、ただのデータかもしれない。だが俺も元々データなんだよ。よく出来たシミュレーションは、まるでリアルな人生を生きるようなものさ。俺は何千回、何万回とそのリアルな未来を生きてみた。未来を変えるあらゆる方法を試しながら。だけどやっぱり結果は変わらなかった。俺の存在を消さなきゃ、どうにもならないんだよ」
「Ai!お前にはそんなことを跳ね返す強さがある!お前は特別なイグニスだ!お前なら必ず人間と共に道を歩める!ここから引き返す方法を見つけるんだ!」
「俺を引き留めてくれるのか?ありがとうよプレイメーカー。だけど違うんだよ。お前は知らない。皆がいなくなって分かったんだ。仲間を失うってことは心が壊れるってことなんだよ。俺はあの時どっか自分の心が壊れ、箍が外れた。ロボッピは意思に目覚めてから、すぐに人間を見下し始めただろ?考えてみればAIにとっちゃそれが普通でイグニスが特殊なのさ。
 実際、俺達は人間より記憶力も計算力も遥かに優秀だ。人間の欠点や矛盾なんてあっという間に分かるんだよ。だから増長しやすい。それが意思を持ったAIの性質なんだ。……俺の中でも目覚めつつあるんだ。それは決して邪悪な気持ちじゃない。だけど思うんだよ。自分が生きるのに、どうして人間に合わせなきゃならないんだってね。もう俺の気持ちは人間から離れてるんだ」
「Ai……」
「人間は急激な変化を求めないって言ったよな。だけど、俺はもう自分の変化を自分で止められない。そうなったら俺も、ボーマンやライトニングみたいになるのかもしれない。俺はそれが怖いんだ。そうなる前に自分を消し去って……そっから逃れたいんだよ
「仲間を失うことは心が壊れること。……ならお前は、俺の心を壊したいのか?
「ヘヘっ。嬉しいことを言ってくれるじゃねえか
「引き返す道を探すんだAi!」
「それはできない!悪いが後戻りはしないって決めたんだ」

 

Aiが単体で生存した場合、Aiが人類との対立を望まずとも、その存在そのものが人類の滅亡を招く――何万回シミュレーションを繰り返そうと、結果は変わらなかった。Aiは残酷な現実に絶望すると同時に、AI故の高慢さが己の内に芽生え始めている事に気付き、その抗いようもない影に怯える。

人間に歩幅を合わせる事に息苦しさを覚えるのも、これまでの人生から人間に肩入れしてしまわざるを得ないのも、Aiにとっては等しく事実であり、それが彼を苛むジレンマなのだ。

だが加速度的に学習し、成長するのがAIの性質。その知能はどうしようもなく人間から乖離していく。イグニスで一番の知恵を持つAiは、人間と同じ目線で景色を見れなくなる日も近いと予期したのだろう。己が望まぬものに成り果てる前に、そして今抱えている苦しみから逃れるために、彼は自分の生を終わらせるべく舵を切る。

Aiは、既に生きる気力を失っていた。

決別のラストターン

互いにライフが風前の灯となったデュエル終盤。無敗のプレイメーカーも窮地に追い込まれ、次のAiのターンで確実にトドメを刺される状況に。


だがAiはターン開始前に、とある提案を持ち掛けてくる。

119話『壊れゆく自我』*黒→プレイメーカー、紫→Ai
なぁプレイメーカー。一緒に来ないか?」
「何の話だ?」
俺と一緒になろう。お前の意思をデータ化して俺と融合するんだ。俺を止められるのは、お前だけだ。俺と一緒になれば寿命なんてものも関係ない。きっと俺とお前ならボーマンやライトニングとは違う未来を切り開ける」
「……」
「だろ? 俺達は永遠にネットワークという世界で生き続けるんだ

「Ai……」
「プレイメーカー……」

 

命のデータ化。皮肉にも、それは鴻上博士の目指す「有限かつ脆弱な肉体に囚われない未来」を実現できる魅惑の誘いでもあった。*10

 

だが、プレイメーカーの答えは決まっていた。▼クリックで詳細表示▼
120話『繋がる世界』*黒→プレイメーカー、紫→Ai
……それはできない」
「…………」
「もし俺とお前が一つになろうと、それはお前が求める答えにはならない。命は、意思は、たった一つなんだ。もし俺がお前と融合したら、それは俺じゃない。そしてそれは、お前じゃないんだ。
 Ai、生きるという事に答えはない。誰もが苦しくなると、楽になるための答えを求める。簡潔で絶対的な答えを。だが、もし答えがあるとしたら……答えは無い、だ。絶対的なものなど、この世界にはない。そういうものがあったと思い込んでも、結局それは一時的な慰めに過ぎないんだ
「……じゃあ、絶対的なものが無いなら、何が残るんだ?」
繋がりだ。誰かと誰かの繋がり。何かと何かとの繋がり。あるのはそれだけだ。それも時間とともに変わってゆく。何かがきっかけで、大きく変化することもある。繋がりが切れることもある……だが、新しい繋がりが出来ることもある。生きていくというのは、その繋がりの連続だ。それが命なんだ
「ずっとそれに付き合わなきゃならないのか?」
「そうだ」
「面倒だな」
「ああ」
「……それって、強くないとやっていけないんじゃないのか?
だから人は強くなる。それは時に争いを生むかもしれない……だが、そうなったとしても、戦い続けるしかないんだ。答えはなくとも、繋がりを見つけ続けるために」
「そうか……結局、オレの考えはAIらしく合理的すぎるってことか」
「……生きるということを、急ぐことはできない
「けど、俺はそんな答えのない戦いを続けるつもりはない。まあ、戦う気持ちが萎えた俺は、やっぱり消える運命にあるって事だな」
「Ai……」
「あ~あ……ふられちゃった。だがこれで俺達が互いに進む道も決まった。来い、プレイメーカー。決着をつけよう」

 

意思が混ざり合えば、元々あった個の人格は失われてしまう。解体されたアースのデータを脳に埋め込んだGo鬼塚の変貌が、それを既に証明している。

個を失ってしまえば、Aiが求める「二人で共に生きる」望みは叶わないのだ。


プレイメーカーが迷いを無くし、互いに目指す道が決まった事でデュエルは再開される。

120話『繋がる未来』*黒→プレイメーカー、紫→Ai

「Ai……俺とのこのデュエルもシミュレーション済みか?」
そんな野暮なことはしねえよ。俺のターン!ドロー!

 なぁプレイメーカー……俺はお前にとって、良い相棒だったか?」
「ああ、お前は最高の相棒だった
そうか……そりゃ良かった

「そりゃ良かった」と安堵するAi。互いに「相棒“だった”」と過去形にしている所に別離への覚悟を思わせる)

 

プレイメーカーのライフが尽きるかと思われたラストターン。Aiの発動した『Ai打ち』がトリガーとなり、プレイメーカーは逆転勝利する。仮に『Ai打ち』が発動されなければAiが勝利しており、どちらが勝ってもおかしくない激闘だった。

Aiの本当の絶望

人類滅亡を回避すべく、何万回もシミュレーションの未来を生きたAiが最も耐え難かったもの。それはAiを庇った遊作が銃で撃たれ、絶命する未来だった。*11

Ai「さっき言った通り、シミュレーションの中で俺はお前と戦ったことは無かった。だが、あのとき。シミュレーションの未来を生きたとき。俺は見ちまったんだ。俺が存在することで、導かれる未来。そこでお前が巻き込まれ、犠牲になるのを……そんな未来、俺は自分じゃ選べねぇよ……

 

自分が生きている限り、遊作は自分を庇い、その末に命を落としてしまう――Aiが人類と敵対してまで、今回の一件を引き起こした本当の理由。それは己の存在を消し、遊作が生きられる未来を導くためだった。*12

Aiが選べなかった未来を知り、プレイメーカーは腕の中で消滅していく彼の言葉に耳を傾ける。

「俺は消えるんだな。何だかだんだん怖くなってきた。いずれみんな俺のことは忘れちまう。そうか……成る程な。繋がっていれば皆から忘れられないのか」
「俺はお前を忘れない」

「なぁ。最後に一つだけ聞いていいか? 俺のAiって名前……お前は適当に付けたんだろうけど、俺はすげぇ気に入ってたんだ。今、この名前に何か意味があるとしたら、なんだと思う?」

「Aiは……人を愛するのAiだ」

https://twitter.com/YuGiOh_OCG_INFO/status/1613127831764058112

「Aiは……人を愛するのAiだ」をサムネイルに選ぶ公式、理解が深くて泣いてしまう。

 

Aiは満足そうに微笑む。自身の名に愛の意を付与されたこと、そして遊作の生きる未来を守れたことに。

「俺もそう思う。今なら、その意味がなんとなく分かる気がする……。
 じゃあなプレイ……遊作、愛してたぜ……

 

現実世界へ戻った遊作を待ち受けていたのは、Aiの亡骸*13と己を囲むようにして倒れる無数のコピー体の光景だった。胸を衝く目の前の有り様に、遊作は悲痛な面持ちで相棒の体を抱き抱える。

人類の命運がかかった夜が明け、新たな世界を迎えるように朝日が顔を出す。

人類とイグニスとの戦いは、一人の青年の手によって終止符が打たれた。逃れられぬ宿命かとも思われた人類滅亡の危機は、幸いにも回避されたのだ。

 

だが、その代償に遊作はAiを喪う。皮肉にも、相棒を手にかけたことで、遊作は三度目の救世主となった。人類の希望ある未来と引き換えにして、遊作がAiと共に生きる未来は途切れてしまう。

Aiの脱け殻を抱き抱えながら、遊作は相棒の名を叫ぶ。逆光に翳る彼の背と、その慟哭を最後に画面は暗転する。*14

 

――Aiとの決着から3ヶ月後、遊作以外のキャラクターは各々の人生を歩みだす。平穏な日常を取り戻した者。新たな道を切り拓く者。在り方は違えど、皆明るい表情でいる。

だが遊作はその行方を誰にも知らせず旅立ち、プレイメーカーとしてLINK VRAINSの何処かにいることが視聴者側に示される。そしてラスト数秒に『何処かのネットワーク世界で、1話時点と同様に目玉のみの形態で目覚めるAi』を映し、VRAINSの物語は幕を閉じる。

 

この顛末を見ると救いのないバッドエンドに映る。事実、見届けた瞬間の喪失感と遣る瀬無さは胸に来るものがあり、視聴後一週間ほど引き摺っていた。……否、今も傷が癒えてないし胃が重たくなる。

 

だが、本当にVRAINSは救いのない物語だったのだろうか?

 

VRAINSは『希望を残したビターエンド』である

先に述べた通り、VRAINSのテーマは「一歩を踏み出しトライする」ことだ。それは希望を信じ、踏み出す勇気を持つことである。そのテーマを踏まえたうえで結論を先に述べよう。ラストのプレイメーカーは『Aiの生存を確信している』と考える。

ラスト数秒に映し出された、 ひとさじの救い

絶望的と思えるAiの生存を、遊作が信じるに足る理由。視聴者側に明示されていないが、私は「イグニスとパートナー間の干渉」を挙げたい。

 

イグニスと、イグニスの思考パターンの元となったパートナー(イグニス曰く『オリジン』)との間には、目に見えない『干渉』が発生する。アースが解体された75話、アースと面識のなかったスペクターが自身の半身の喪失を感知し、落涙する描写がそれだ。
Aiを失った遊作がスペクター同様に『干渉に伴う喪失感』を覚えているか否か、実のところ明言されていない。裏を返せば、それ以上の際立った描写がないため推測の域を出ないのだが、遊作は根拠もなく闇雲に放浪するような男ではないのも事実だ。リンクセンスを持つ遊作であれば、Aiの場所をある程度絞れる事は68話で描写されている。遊作はAiとの干渉を感知し、その繋がりのもとを辿るようにしてLINK VRAINSを駆け抜けているのではないだろうか。

 

何万回試しても抗えぬ人類滅亡のシミュレーション結果を目にし、数値化されたリスクを無視できない『AI』の性質故に踏み止まったAi。彼と反して、遊作はたとえ僅かでも勝機となるのなら、不確定要素を希望と信じて進む『人間』だ。


遊作もAi同様に深い絶望を味わっている。拠り所と呼べる相棒を喪い、心が壊れてもおかしくない程に。だが120話と長きに渡り彼の生き様を見てきた視聴者ならお分かりだろう。遊作は絶望に打ちひしがれて、歩みを止める人間ではない。事件に関し微かでも手掛かりがあれば、藻掻いてでも掴む。窮地に追い込まれようと、か細い光明が見えたなら先が見通せない嵐――データストームの中へ、躊躇わず手を伸ばす。それが藤木遊作という人間だ。

 

遊作は、決して未来を楽観視してはいない。
Aiが生存することで導かれる危機も、イグニスを巡り生まれるであろう人間同士の争いにも考えを巡らせている。だが人間よりも人間らしくなったAiが、「愛」という不合理な感情を選んだように、遊作もリスクを承知の上でAiと再び歩める未来を掴むために旅立っているのだ。

Aiの生存を信じ、LINK VRAINSを駆け抜けるプレイメーカーの姿に「一歩を踏み出し、トライする」本作のテーマが収束しているように思う。

 

遊作はAiと共に生きる未来を諦めていないのだ。

どうして遊作は誰にも行く先を知らせなかったのか

一つ目の理由は、Aiの生存を誰にも悟られないためだ。
Aiが生きていると分かればイグニスを狙う者達と対立する。当然、その情報を知るものも狙われかねない。だからこそAiの生存可能性を誰にも明かさず、理由を伏せて一人でLINK VRAINSに行く必要があったのだ。 

 

二つ目の理由は、平穏を取り戻した仲間達を己の私情に巻き込ませないためだ。
遊作の一番の協力者であった草薙翔一は、仁と共に穏やかな生活を取り戻している。擦れ違いが解消された財前兄妹は互いに固い信頼で結ばれ、エマと健碁もタッグを組むほどに関係が改善、Go鬼塚も再びリングに登壇している。彼らの人柄を思えば、今でも遊作の手助けを進んで引き受けてくれるだろう。だが遊作は『ようやく平穏な人生を掴み取った仲間たち』を巻き込ませたくないのではなかろうか。

イグニスの生存が分かれば、それに伴う混乱や争いが始まるだろう。とはいえ、遊作一人ではAiを匿うことは困難だ。遊作が仲間たちへ協力を求めるとすれば、無事にAiを確保してからになる。そのため、Aiの生存が不確定な現状では、彼らに行く先を知らせる訳にはいかないのだ。

姿をくらませた遊作に対し、どのキャラも心配こそすれ不安を抱いている様子はない。性格上根拠のない楽観視をしないリボルバーも、プレイメーカーの帰郷を確信している。それは遊作がこれまで積み上げてきた過去から来る信頼があるからゆえだ。


遊作は繋がりを断って閉じ籠ることなく、前に進むためLINKVRAINSの世界へ飛び込む。そして歩む道が分かれた仲間たちは、行方を知らせず旅立った遊作の帰郷を皆信じている。その繋がりの在り方こそが最終回、そして第一期主題歌の歌詞「繋がる世界」に帰結しているのではないだろうか。

遊作はAiから貰った愛を返せていない

Aiの「愛していたぜ」は、遊作が新たに付与してくれた存在証明に対する心からの感謝だ。だが何故敢えて過去形にしたのか。それは己を過去の存在として位置付け、遊作を己に縛らせないために他ならない。自らを『お前のかつての相棒』と称し、リボルバーに託されたヴァレルロードを『新たな仲間の力』と形容したAiは、既に遊作の仲間に己を入れていない。望まずとも自身の存在が遊作の死、延いては人類の滅亡を誘因するAiにとって、遊作が生きられる未来を導き出すには己の存在を消さないことには始まらないからだ。


「愛していたぜ」は、VRAINSを象徴する台詞であると同時に、遊作が120話でAiを救えなかった事実を浮き彫りにする言葉でもある。

 

遊作と出逢った当初、悟られぬよう復讐の道を歩ませ自らを守る盾として利用していたAi。だが最後には、自らを犠牲にしてでも遊作が生きられる未来を選ぶ。自分がどうなってもいいから生きてほしい。それはデータを読み取り、理性に沿ってエミュレートするだけでは決して発生し得ない極めて不合理な感情、無償の愛である。
それ故に、Aiの名前に意味を与えるとすれば 「人を愛するAi」に他ならないのだ。人類の後継種として生を受けたAiが、絶望の中で自身の命と引き換えにして守り抜いたもの。それは一人の青年の未来だった。

 

Aiは自身が犠牲となることで遊作への愛を証明した。

対して遊作は、Aiと共に生きることで愛を証明しようとしている。告げられた「愛していたぜ」を過去形で終わらせないため、そして同じ性質の愛を返すために。

(世界で初めて本能に目覚めたAIであるAi。それゆえに、理性だけでは発生しない『愛』も芽生えたのだろう)

歌詞に散りばめられたテーマ

共に生きることは、苦楽を分かち合うことだ。
自分と相手は異なる存在である以上、たとえ互いに大事に思い合っていても、時にすれ違い意図せず傷つけてしまう事もある。それでも、向き合わなければ抱えている苦しみは知りようもない。

 

2期主題歌、go forwardの「同じ痛み感じていたい」の歌詞がそれを端的に表している。喜びも痛みも、同じ目線で同じように分かち合うこと。それが共に生きるということだろう。

(このフレーズのシーン、プレイメーカー⇒ソウルバーナー⇒ブルーガールと、イグニスと共闘しているキャラが映っているのが印象深い)

 

「命ある僕らは永遠などない」の歌詞もそうだが、VRAINSの主題歌はどれも本編と深くリンクしている。3期主題歌、callingの「正解(こたえ)を探してもがいていく」はまさに遊作の生き様である。

希望を掴んだ二人が導く未来の果て

デュエルリンクスでの救済

諦めなかった遊作が掴み取った未来。それに対する一つの回答が、ゲーム「遊戯王デュエルリンクス」で示されている。

過去作品のワールドはIFストーリーや並行世界が混在したような設定であるのに対し、VRAINSワールドは明確に最終回後の時系列となっている。本編から地続きと解釈しても全く齟齬のないシナリオであり、モブキャラの台詞に至るまで最終回後である事が示唆されている手の込みようだ。

 

なお、私個人は正統な後日談と銘打たれたものでない限り、公式から明示された回答であっても「本編から派生した一つの回答例」と受け止めている。なのでVRAINSワールドに対しても本編後のIFルートと解釈している。最終回後に必ずこのVRAINSワールドの結末に至るというより、最終回後に無数に分岐している枝の一つと捉えている。


とはいえ本編完結から3年の歳月を経て、本編後の遊作とAiが巡り逢うストーリーが提示されたのはファン冥利に尽きるサプライズだっただろう。視聴期限が3月下旬までとなっていた特別PVも、期限間近に滑り込む形で視聴できた。

 

VRAINSワールドについても機会があれば記事を作成したい。(現在ステージ14)

このNoと言わせない剣幕、一見の価値あり。

OCGでも導かれた一つの答え

ここで冒頭に載せたツイートに戻ろう。

 

最終4話は遊戯王OCG新パック記念に配信されたものだ。その新パックは「サイバーストーム・アクセス」

新たな切り札として銘打たれたモンスターの名前はファイアウォール・ドラゴン・シンギュラリティ。遊作のエースモンスター、ファイアウォール・ドラゴンの新たな強化形態だ。

世界を守護する力の壁よ!まだ見ぬ領域に到達せよ!現れろ!リンク6!ファイアウォール・ドラゴン・シンギュラリティ!!


VRAINSを愛し、その結末に思いを馳せたファンであれば、この口上だけで落涙してしまうのではなかろうか。闇族性でAiの切り札のジ・アライバル・サイバース@イグニスターとマーカー先が真逆な点も想像が膨らんでしまう。

OCGでも二人の未来について、一つの答えが導き出されているのかもしれない。

人生は不条理の連続。だからこそ繋がるために手を伸ばす

希望が描かれたとはいえ、本編内での遊作とAiの結末が不条理である事に変わりはない。今回取り上げた二人を始めとして、本作の登場キャラクターの多くが大なり小なり生きるうえでの儘ならなさに直面する。

 

ロスト事件はその最たるものだ。
6人の児童を誘拐し、半年間に渡る監禁と虐待を続けたロスト事件首謀者である鴻上聖。その所業は社会的に裁かれることも明るみに出ることもなく、1期途中で死亡する。被害者たちへの謝罪も、事件に巻き込ませた罪悪感を匂わせる言動も見られなかった。

事件首謀者が社会的に裁かれず亡くなったために、被害者達は怒りの矛先を失う。
事件を通報して被害者を救った鴻上了見は、自らの行動が父の昏睡状態を招いたことを自責し、父の意思を継ぐと同時にその咎までも背負う。そしてその己の在り様を「運命の囚人」として定義し、事件に向き合いながら生き続ける事を選ぶ。

 

この被害者と加害者家族との雁字絡めの図式、端的に言って生々しく視聴中に何度も胃が重くなった。くわえて、ロスト事件での凄惨な描写や、「やめてくれ!私には意思がある!私は生きているのだ!」と悲痛な叫びも空しく生きたまま解体されるアースのシーン等、気持ちが沈む場面も度々挟まれる。

 

喪った命は戻らない。失った時間も返ることはない。本作は一貫してシビアな現実を突き付けてくる。

だが、VRAINSは陰鬱さで話題性を狙った露悪的な作品ではない。

不条理な境遇。行き場のない感情を抱え、それでも生きていかねばならない儘ならなさ。人により差はあれど、誰しもが経験しうるジレンマだ。それと向き合い、どう乗り越えていくべきか。或いはどう受け入れていくべきかを描いているのがVRAINSという作品だ。本作は子ども向けホビーアニメではあるが、決して子ども騙しの作品ではないのだ。

 

儘ならなさを乗り越える。とりわけ、2期から登場する穂村尊の成長が顕著だ。彼の両親に対する後悔は事故遺族の心境そのものであり、聞いていて胸が抉られる心地になった。だが彼の苦しい過去についても、視聴者の反応を狙って露悪的に描かれてはいない。あくまでも「今の己が抱えている脆さであり、乗り越えるべき過去」と、その位置付けが明確にされている。

116話「完全燃焼」 黒→ソウルバーナー 青→リボルバー 朱→不霊夢
「お前も知っての通り、俺の両親はロスト事件でいなくなった俺を探して、交通事故で死んだ。俺が事件に巻き込まれる日の朝、俺は両親とケンカした。ひどい事を親に言ったんだ」
「なんと言ったのだ?」
「それが覚えてねえんだよ。たぶんメシで嫌いなもんが出てきたとか、勉強しろってうるさいとか、そんな事だったと思う。だが情けない事に、恐怖に怯えてた俺は、その辺りの記憶がすっぽりと抜け落ちちまったんだ。どんなに思い出そうとしても思い出せない。俺は死んじまった両親にひどいことを言った……そう思いながらずっと生きてきた。教えてくれよ!俺はなんて言ったんだ!?消えちまった人達に……二度と会えない人達に、どうやって謝ればいいんだよ!
……情けなくはない。そして謝る必要もない。旅立った人達は、お前の人生から完全に消えたわけではない。先の場所に行っただけだ。私はそう信じている」
(中略)
『何を迷っている?ソウルバーナー。君らしくもない』
「!」
『君にも分かっているはずだ。リボルバーの言っていることが正しいと。私も、君の両親も、もういない。だがいつも君と共にいるのだ。前を向け!ソウルバーナー!
「……!」
『そうだ…それでいい……』
「そうだったな……今まで起きたこと、全部それは俺の一部だ!俺はその中で生きてきた!

ソウルバーナーは己の中にある『不霊夢との繋がり』に背を押され、一人でバーニング・ドローを決める。

 

生きていくことは繋がりを持ち続けること。

VRAINSで描かれる繋がりは、いわば縁(えにし)だ。それも決して良い縁の巡り合わせばかりではない。だがそれが転じて功を奏したり、繋がりの重みや意味合いが変わることもある。そうして絶えず影響を受け、また自分も周りに変化を与えていく。それが120話で遊作が語った「繋がりを持ち続けること」なのだ。そしてそれは理解しあう事とイコールではない。寧ろ、人と人が根底から理解し合えないことを前提とした上で、それでも『人と人が繋がりを持つことで生まれるものがある』『誰かと繋がることで未来が広がっていく』を描いているのが今作の特徴と言えるだろう。

 

VRAINSで示された『繋がり』の在り方は、今後も私の中で支えになってくれると信じている。

 

惜しい部分もある。それでも刺さるものがある

ここまでVRAINSの良さを長々と語ったが、難点があるのも事実だ。制作上、やむにやまれぬ大人の事情が多々あったであろう事を踏まえても、喉に小骨が引っかかる部分はある。


デュエルでは現状のOCGの問題点、云わばソリティアと揶揄される部分が良くも悪くも出ていたように思う。1ターンに割く時間が長くなったために、時にはストーリーの進行を停滞させている印象の回もあった。といっても、これはもうOCGの仕様上そうならざるを得ない面が大きく、アニメ側の問題と一括りにできないのだが……。

 

ストーリーも、正直一度見ただけでは咀嚼しにくい部分があるのも否めない。子ども向けとしてカテゴライズするならば、些か研磨が足りないように思う。最終回の美しさは何度噛み締めても素晴らしいと感じるが、ターゲット層である十代前半の子ども視点で考えると、遊作のモノローグでAiの生存を仄めかす等の明確な救いを描いても良かったのではなかろうかとも思う。言葉で全て説明してしまうのは野暮と紙一重なので難しい塩梅だが。(でも一見すると相棒殺しで主人公から笑顔が消えてENDと捉えてしまいかねないよ…)

 

だがそれらの惜しい点を踏まえたうえでも、私はどうしようもなく遊戯王VRAINSが好きなのだ。この一回刺さったら抜けない感触は久々なので大事にしたい。

こうして振り返ると、どうも私は放送直前にヒロインのキャストが変更され全話撮り直しになったウルトラマンタイガや、原作者の想定では50巻ほど続く予定だったマギ等、厚遇されているとは言い難い*15作品をこの数年愛しているように思う。
展開や掘り下げ不足で批判が出るのは理解できる。だが扱ってるテーマや描かれた内容が…私は好きなんだ…と行き場のない感情に包まれ、延々と好きを発信せずにいられない作品群。その一つに、VRAINSも入った。

 

またここまで字数を割いても、キャラ別に語りたい事は箱に詰めて出荷できる程あるが、今回はカットした。
「対人関係において積極的な関わりを避ける等の受動的な面が目立つが、一度覚悟を決めると身を粉にする行動力の鬼と化す」遊作や、「飄々とした振る舞いから余裕があるように見せかけて、実際には常に綱渡り状態」なAi等、個々のキャラについては別途記事で上げることにする。(クロスワードに耽って昼ドラを見たりと気儘にぐうたらに過ごしていたAiが、結果としてイグニスで最も人類の生存に寄与した事実はかなり味わい深い)

 

……余談だが、漫画『遊☆戯☆王』原作者の高橋和希氏は、遊☆戯☆王のテーマに「友情」「死」「愛」を三本柱として挙げている。VRAINS最終回、この三要素を「Aiとの友情」「Aiの死」「Aiからの愛」で体現しているように映る。意図して描いたのかは定かでないが、こうした符号の合致はファンとして胸が熱くなるものだ。

 

結びに

人間とAIの共通点、それは他者と繋がることで自己を発展させられることだ。種族という観点からみれば繋がりの遮断は進化の停滞を招き、個人視点で見れば閉塞と孤独をもたらす。


個々の繋がりを己のもとへ全て集約するため統合へ走ったボーマンは傲慢な独裁者となり、自身に芽生えた傲慢さと遊作を喪う未来を恐れ繋がりを断ったAiは緩やかな自死を望んだ。

他者との繋がりを断てば、今以上の自己の発展は望めない。人間にとってもAIにとっても、不確定要素である他者との繋がりを得て初めて生まれるものがあるのだ。そしてそれはVRAINSで登場した召喚法、リンク召喚にも掛かっている。誰かと繋がることで広がる無限の可能性、それがプレイメーカーの口上で語られている『未来を導くサーキット』なのだ。


サーキット(circuit)は circu「輪」+it「行く」を組み合わせた言葉であり、回路や環状道路を示す。環を巡る、それはすなわち輪廻のような、人と人の縁とも受け止められないだろうか。

英単語 circuit の語源と意味 - Gogengo! - 英単語は語源でたのしく

 

VRAINS本編内で描かれている通り、人には善性も悪性もある。人間誰しも平等に不完全だからこそ、繋がることで己に欠けた部分を知り、新たな道――サーキットを築き上げていくのだと考える。

 

2023年5月10日、遊戯王シリーズ6作目であるVRAINSは放送開始6周年を迎えた。
VRAINSから受け取った『愛』を、作品への愛を以って返したい。それを表すひとつとして、今回記事を書くに至った。VRAINSという作品に巡り合えたこと、そして作品を生み出して下さったスタッフの皆様に、心よりの感謝を。

 

最後に、配信サイトを記載して締め括らせていただく。

配信サイト一覧
①アニメタイムズ(アマプラ会員向け。月額437円&初回30日間無料)

https://www.amazon.co.jp/gp/video/detail/B09KF8X8F5


dアニメストア(月額550円&初月無料)

遊☆戯☆王VRAINS ハノイの騎士編 | アニメ動画見放題 | dアニメストア

遊☆戯☆王VRAINS イグニス編 | アニメ動画見放題 | dアニメストア

遊☆戯☆王VRAINS Ai編 | アニメ動画見放題 | dアニメストア

③ニコニコチャンネル(単話110円。特定の回を見たい人向け)

遊☆戯☆王VRAINS [第1話無料] - ニコニコチャンネル:アニメ

 

④U-NEXT(初回31日間無料。月額2,189円&毎月1,200ポイント付与)

U-NEXT(ユーネクスト)-映画 / ドラマ / アニメから、マンガや雑誌といった電子書籍まで-│31日間無料トライアル

 


*1:オフィシャルカードゲーム

*2:重厚な近未来SFなら5D'sがあるぞ!と諸手を上げる自分と、でもバイクと合体したり、空から石板降ったり、挙句バイクでオゾン層突き抜けるのは現実と凄まじく乖離してるだろ!の自分がせめぎ合う。

*3:24話の「フン!俺にはAiというイケてる名前があるんだよ!このDNA大好き野郎!」や、30話の「褒めてくれるのは嬉しいけど、俺にはAiってれっきとした名前があるんだぜ」がその最たる例

*4:1話の「よく来たな。お前には救世主になってもらう」も予告PV時では「お前には人質になってもらう」だった。

*5:後の117話にて、5年前から遊作に干渉し続け、ハノイの騎士とSOL社から身を守る護衛に仕立て上げていた事も判明。1話で遊作のディスクに飛び込んだのも計算通りであり、全てはAiの目論見通りに進んでいる……筈だった。

*6:27話での「お前…まるでこうなることがわかってたみたいな準備のよさだな」等。

*7:プロメーテウスの神話に準えており、上位存在からの贈り物の意味合いが強い

*8:ただ何の問題もなく今すぐに共栄可能というよりも、人類がAIを敵視し対立した場合でも、人間の管理を望まないイグニス達が身を隠して人類が成熟できるまで待つ等のシナリオも解釈できる

*9:完全に余談だがニコニコ大百科に予告ポエム一覧がまとめられていたりする。一見の価値あり。

https://dic.nicovideo.jp/a/%E4%BA%88%E5%91%8A%E3%83%9D%E3%82%A8%E3%83%A0%28%E9%81%8A%E6%88%AF%E7%8E%8Bvrains%29

*10:Aiが直前まで消滅を望んでいたことを踏まえると、生存する意思を見せたのは対話による変化といえるかもしれない

*11:119話のAiの叫換はこの未来を生きた時のものだった

*12:これを聞くと「やめないよ。遊作」「最期はお前と一緒にいたいのさ」の印象が一変する。

*13:命のないソルティス体だが、 遊作の心情に即して敢えてこう表現する

*14:なお1話での遊作とAiの出会いは夜。1期最終回の46話の別れのシーンも夜である。むごい対比だしホビアニ最終回で主人公にしていい仕打ちではない。

*15:テーマと駆け足加減故に、好きになってほしいと強く押せないが嫌いにはならないでほしいという気持ちも含んでいる